ブログ
Blog
Blog
尼崎市東七松町にある「まつうら内科」院長 松浦邦臣です。
緊急事態宣言解除もつかの間、息つく暇もなく全国で感染再拡大の兆候がみられます。おそらくは変異種による感染拡大がひとつの原因でしょう。ニュース等で報道されている変異種による感染者数は、PCR陽性者の一部(30%程度?)をランダムにpick upして変異種検査に回しているので、実際の感染者数はさらに多いと予想されます。
【そもそも変異とは】
ウィルスが細胞内で増殖するときに何百という自分のコピーを作成するのですが、複製時にコピーエラーが起こり、いわゆる不良品も多数作成されます。ほとんどの不良品は、ウィルスとして機能せずに捨てられるのですが、まれにウィルスとして機能するケースもあり、元のウィルスと少しだけ形(抗原性)を異にするウィルスが誕生します。これが今の変異種です。つまりたくさんの人に感染すればするほど、たくさんのコピーエラーが生じ、そのなかのごく一部から変異種が誕生するわけで、パンデミックともなれば、変異種の誕生は予測されていたことといえます。実際、インフルエンザウィルスでも毎年少しずつ抗原変異(小変異)が起こっているので、ウィルスの変異というのは決して珍しいものではありません。すでに世界ではいくつかの変異種が認められており、おそらく変異種が誕生したであろうといわれる場所(国)の名前からイギリス型、ブラジル型、南アフリカ型などといわれています。
【変異のなにが問題なのか】
イギリス型変異種は変異前のCOVID-19(wild-type)と比較して、より若年者に感染することが分かっています。このためきっちりとしたマスク着用が難しい幼児や園児、小学生でも感染が成立し、それを家庭内に持ち込むことで家庭内感染が増えているようです。もともと高齢者は重症化しやすいので、家庭内でお孫さんなどから感染して不幸にして亡くなる方も増えてしまうでしょう。また一度wild-typeに感染した人であっても、抗原性が微妙に違うことで免疫が認識できずに再感染を起こす可能性があるので、一度感染したからといっても油断はできなくなります(もともと自然免疫の効果は3-6か月程度ですが)。
さらに将来的な危険性として、同じ細胞に異なるウィルスが同時に感染し、大規模な遺伝子交雑(遺伝子再集合)がおこると、抗原性が大きく変化して、まったく未知のウィルスが再度誕生するかもしれません。こうなると2回目のパンデミックか!?となりますが、こういった現象は数十年に一度といわれているので、そうそう簡単に起こるものではないと思いたいです。
【ワクチンは効くの?】
今のところ、イギリス型はwild -typeと同様に免疫獲得が期待できますが、ブラジル型や南アフリカ型は一部効果が落ちる(免疫寛容)と言われています。ただ、まったく効果がなくなるわけではないので、個人的見解としてワクチンについては接種しないよりは接種したほうがよいと思っています。また、mRNA型のワクチンは、これまでのワクチンよりも、容易に抗原変異に対応して作り直すことができるので、すでにワクチンメーカーは対応を開始していると報道されています。
【私たちが今できること】
変異種といえど、感染経路まで変わるわけではないので、これまでの感染対策を愚直に続けていくことしかないと考えます。今回の非常事態宣言では、飲食にターゲットを絞った対策である程度効果を上げたのですから、宣言解除後に国がなんらかの飲食事の対策を打つかと思っていましたが、なんの音沙汰もなく、またぞろお願いベースばかりで非常に残念におもっています。メディアも「人出が多い」と言ったかとおもえば「どこどこの店がおいしい」と言ったり、なにがしたいのやら。飲食店における卓上パーテーション設置の義務化キャンペーンなどできないものかと思うのですが…?。政治、医療はもちろん、いまこそ日本のジャーナリズムも問われていると感じる日々です。
–