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第6波はオミクロン、デルタとはちょっと違う。

尼崎市役所から北へ車で1分、東七松町にある「まつうら内科」院長 松浦邦臣です。新年があけるとともに懸念されていた新変異株「オミクロン」がいよいよ国内で流行の兆しを見せ始めました。イギリスでは新規感染者のほとんどをオミクロンが占めているようで、日本では伝染力を失いつつあるデルタにいずれ取って代わるのは時間の問題でしょう。ただこのオミクロン、デルタとはちょっと性質が異なるようなので、相違点に着目しながら解説してみようと思います。

 

<デルタとは違う顔つき → 免疫(抗体)が認識できない →ブレークスルー感染>

オミクロン株はデルタ株のおよそ30倍、ウィルス表面にある突起物(スパイク蛋白)に変異があります。このため、せっかくこれまでワクチンや自然免疫で獲得したヒトの免疫(抗体)が、オミクロンをウィルスと認識できず侵入を許してしまう「免疫寛容」がおこり、ワクチンを2回接種していても感染してしまう「ブレークスルー感染」が多く報告されています。「ブレークスルー感染」は、ワクチン接種後免疫がしっかりと付かなかったヒト、2回目接種からの時間経過で早くに抗体が減少してしまったヒトから徐々に感染リスクが高くなっていくため、3回目のブースター接種で抗体量を増やすしか、いまのところ方法はないように思えます。

 

<ブースター接種といえばイスラエル>

オミクロン株流行に対して、ブースター接種をどの国よりも進めているのが中東イスラエルです。昨年末の時点で全人口940万人のうち45.6%が3回目接種をすでに終えていますが、現在1日あたりの新規感染者は4千-5千人の水準に達しています。日本の人口に換算すると、ほぼ1日4-5万人が感染していることになり、あの第5波で日本は最高2.5万人程度であったと考えるととんでもない感染者数です。しかし重症者数を見てみると110人程度(第5波で日本は最高2500人程度、人口比率で考えると250人前後)で意外と少なく、しかもうち87%がワクチン未接種者とのことです。ここから読み取るに、まずワクチン接種率60-70%を超えないと集団免疫として効果が出ないため、ブレークスルー感染を抑えるにはブースター接種45%ではまだ足りないと考えます。次にオミクロンはデルタに比べると弱毒化しているのか、それとも2回接種でも重症化予防には十分役立つのか、重症化率はデルタより低いと言ってよいでしょう(今のところ)。

余談ですが、私なら3回目接種率をあげることに注力します。しかしなんとイスラエルは医療従事者と60歳以上の全市民に4回目を承認しました。このあたりが「やっぱりイスラエルだなぁ」といろんな意味で感心しますね。まずお金があってロビー活動に強く、人口が比較的少ないため人口億単位の国よりもワクチン確保が容易であること。さらに常時戦時体制であるためリーダーには調整力よりも行動力が求められることなども相まっての決断なのでしょう。

 

<高い伝染力、低い重症化率は、ウィルスの本来あるべき姿>

感染力は、デルタよりあきらかに強そうです。現時点でオミクロンはデルタの最大5倍の感染力があるかもしれないといわれていて、アルファが従来株(wild type)の1.7倍、デルタがアルファの2倍だったことを考えると、2年で実に1.7×2×5=17倍の感染力を獲得したことになります。

ただ一旦ウィルス目線で考えてみましょう。新型コロナウィルスはヒトに感染しないと仲間を増やすことができません。感染した宿主(ホスト)にある程度元気に動き回ってもらい、次の宿主へと伝染してもらうことで勢力を増していけるのに、デルタのように重症化させてしまっては隔離されてしまいます。このような宿主を危険にさらすデルタこそコロナウィルスにとっては異端児であり、オミクロンこそが本来あるべき姿なのかもしれません。しかし以前のコラムでも紹介したように、ウィルスにとってコピーエラーからの変異種誕生は日常茶飯事です。いつまたとんでもない異端児がでてくると限らないのが、高次機能を持たない=理屈が通じない生物の怖さですね(ウィルスが生物なのかどうかはさておきましょう)。

 

<ロナプリーブは効果イマイチ、モヌルピラビルは効果ありそうだが…>

厚生労働省は、第5波で承認した軽症者にも使用できる抗体カクテル療法(ロナプリーブ)について、オミクロンへの効果が乏しいとして投与を推奨しないと発表しました。もともと抗体をすり抜けやすい性質をもつオミクロンに、人工的に製造された2種類の抗体「カシリビマブ」と「イムデビマブ」が含まれる注射薬は見事にかわされてしまうようです。ただ、同様に抗体を投与する「ソトロビマブ」(ゼビュディ)は、オミクロン株への効果が維持されているようで、ワクチン含め抗体すべてが無効というわけではありません。

オミクロンがデータ通りほとんど軽症であるなら、あえて軽症治療薬は必要ないかもしれませんが、重症化リスク(60歳以上、心臓病、腎臓病、慢性肺疾患etc)のある患者さんをほおっておくこともできません。幸い以前コラムで紹介したモヌルピラビル(ラゲブリオ)はデルタほどの効果(入院死亡リスク半減)は期待できないにしても、ある程度の効果はあるようで現時点では唯一軽症者にも使用できる経口治療薬となります。

ちなみにモヌルピラビル(ラゲブリオ)は1回4カプセルを1日2回×5日間を発症から5日以内に服用を開始しなければならないのですが、供給量が限られているため、どこの薬局にでも置いてあるわけではありません。「ラゲブリオ登録センター」に登録した医療機関、薬局のみが配分を受けられるため、果たして発症から5日以内に薬が手元に届くかどうか不安がないわけではありません。

 

以上、いまわかるオミクロンの情報について解説してみました。オミクロンは現時点では「めっちゃ伝染る風邪」と表現してもいいかもしれませんが、昔から「風邪は万病のもと」と言われますよね。しっかり予防して第6波を乗り切りましょう!

 

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