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高トリグリセライド(中性脂肪)血症は絶対に治療すべきか。

尼崎市東七松町にある「まつうら内科」院長 松浦邦臣です。政府のファイザー社製ワクチン供給に急ブレーキがかかり、その調整に追われる日々でブログ更新が止まってしまいました。オリンピック開催にむけて国民の期待を取り返す最後のチャンスであっただけに残念でなりません。

さて、そろそろ春の健康診断の結果が皆さんのお手元に届く頃かと思います。前回の尿酸値に引き続き、は中性脂肪(TG)をとりあげてみたいと思います。

 

【中性脂肪はLDL(悪玉)コレステロールよりマシ?】

脂質代謝異常症(高脂血症)の一因である中性脂肪(TG)ですが、近年動脈硬化疾患の危険因子であることが明確となってきました。が、LDL(悪玉)コレステロールと比べると、とくに虚血性心疾患に対するエビデンスが弱い印象があるのは、これまでTGに対して積極的に介入しても、心臓におけるイベントがそれほど減らせなかったというデータによるものです。言い換えれば「LDLコレステロールさえコントロールできていれば、中性脂肪は介入しなくてもよいのか?」と思うほど存在感が薄いといえます。

 

【TGは変動が激しい】

TGは、腸から吸収され肝臓に送られるまでのカイロミクロンという物質に大量に含まれるため、コレステロールと違い採血前の食事内容に大きく影響されます。たとえば脂分の多い焼肉や、中性脂肪合成へと導く大量飲酒などは、すぐさま値が上昇します。逆に言えば、採血前にちょっと節制すれば容易に低下するため、ある採血ポイントでたまたま高い値が出たからと言って、それが治療対象となるのかどうかよく考えなければなりません。

 

【TGは動脈硬化の高いリスク?】

文字通り油ですから、動脈硬化のリスクとなることは明白であると思えました。ところが従来の高TG薬(フィブラート製剤)で治療介入しても、思ったほど心臓疾患や脳血管疾患の治療成績との強い相関関係を導き出すことができずにいました。一方で悪玉コレステロール(LDL)へ介入すると、治療成績がぐんぐんよくなりました。結果、「TGは高いよりかは低い方がいいのだろうけど、それよりも一生懸命LDLコレステロールを下げた方が良いよね」という流れが生まれていますし、実際いまのところ強いエビデンスとしては、高TG血症>500以上の方は膵炎リスクがupすることがわかっているぐらいです。

 

【PROMINENT試験に期待】

近年選択的PPARαモジュレーターである新しいペマフィブラート製剤(パルモディア)が発売され、この薬剤ならば心筋梗塞や、脳卒中のリスクが減らせるのではないかと、今、全世界10,000人を対象に臨床試験が行われています(PROMINENT試験)。ただ、糖尿病合併患者さんに限るという前提なので、この試験で有意な結果がでたとしても、いますぐ高TG血症の方全員がいきなり治療対象となることはならないでしょう。

 

【いまのところ扱いは尿酸と一緒】

以上から、中性脂肪は尿酸とおなじく正常値以上だからといって、すぐに治療薬を投与するものではなく、まずは食事指導をおこなうべきと考えています。ただ今後臨床試験の結果で、今後治療の意義が見直されることもあるかもしれないので注意深く見守っていきたいと思います。

 

 

 

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