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2020年11月(予定)に尼崎市東七松町に新しく開院する内科、呼吸器内科クリニック「まつうら内科」院長の松浦 邦臣です。
今回は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染経路についてコメントしていきたいと思います。
ヒトの上気道を介した感染が成立するには、以下の3つの感染経路があります。
■飛沫感染
咳やくしゃみ、大声によってウィルスを含んだエアロゾルが大気中へ放出され、これが地上へ落下するまでに、他者がこれを上気道に吸引することで感染が成立することをいいます。落下するということはエアロゾルが大きく(5μm以上)、この大きさであれば不織布マスクで予防が可能です。
■空気感染
同じく大気に放出されたウィルスを含んだエアロゾルが地上へ落下することなく空中を漂い、これを呼吸で体内に吸引することで感染が成立することいいます。落下しないということはエアロゾルが小さく(5μm以下)、この大きさだと不織布マスクを通りぬけてしまうため、より高性能なN-95マスクが必要となります。
■接触感染
手や身体に付着したウィルスが、ハグや握手を介して直接的に、または机や椅子、ドアノブなどを介して間接的に、他者の手などに付着し、これを鼻や口など上気道へと移動させることで感染が成立することをいいます。
COVID-19はインフルエンザと同じく飛沫感染と接触感染が主な感染経路といわれていますが、インフルエンザよりも「接触感染がはるかに強力であること」と、「ある一定条件では空気感染に近い状態になりえること」が、このウィルスの感染制御を非常に難しくしています。
①接触感染が非常に強い=環境における生存時間が長い。
ある一定条件の環境下においてCOVID-19は72時間生存可能と報告されています。インフルエンザウィルスが、およそ2~8時間しか生存できないのと比べると非常に長時間生存しています。幸いコロナウィルスは紫外線に弱いので、日光があたる屋外であればよいですが、不特定多数のヒトが利用する、日のあたらない、換気も悪いような場所では、昨日、COVID-19に感染したヒトが触れたモノに、今日、他者が触れても生きたウィルスが付着する可能性があります。これがゆえに接触感染が非常に強力で、クラスター発生の一因になると考えます。
②ある一定条件下において空気感染に近い状態=エアロゾル感染の可能性。
COVID-19は基本飛沫感染ですが、空気の流れがない密閉された空間においては、エアロゾルが落下せずに3時間程度漂うことがわかっています。この落下せずに漂うエアロゾルを吸い込むことで感染することを、最近ではエアロゾル感染と表現しているようです。こうなると空気感染と差がなくなってくるため、不織布マスクだけでは予防することが難しくなります。これもクラスター発生となる一因です。
以上のことを頭において、感染対策を考えていきます。
①「密接」を避け、こまめな手洗い(アルコール、石鹸)。
どこに付着しているかわからないウィルスですが、「密接」を避ければ接触機会は当然減ります。たとえウィルスに触れたとしても、最後は自分の手を介して上気道に達するのですから、こまめに手を洗えば感染は成立しません。こまめな手洗い、手指消毒は最初面倒くさいと感じるかもしれませんが、すぐに慣れます。帰宅時に服をすぐに洗濯し入浴するのもよいでしょう。ただし洗濯の際にはポケットの中身をよく確認しましょう。先日、服と一緒にスマートフォンまで洗ってしまった事を、私は今でも忘れられません。
②「密集」を避け、飛沫を回避。
飛沫は最大2m程度で落ちると言われています。不織布マスクを着用して1~2m離れていれば、たとえ飛沫が起こっても感染を防ぐことができます。フェイスシールドも顔に飛沫がつかないので有効ですが、お互いに鼻と口にしっかりマスクをしていれば無理に付ける必要はないでしょう。
③「密閉」を避け、換気をよくする。
窓がなく換気の悪い密閉空間は、エアロゾル感染のリスクとなり、不織布マスクでは充分ではないかもしれません。N-95マスクを苦労して手に入れるより、「密閉」とならないよう注意する方が懸命です。
④マスク着用時に、オープンスペースで、ヒトとすれ違っただけでCOVID-19に感染することはまずない。
医療機関の感染対策マニュアルには、COVID-19陽性の患者さんを診察する場合であっても、エアロゾルが発生する状況でなければ不織布マスク+接触感染対策でよいと明記されています。①~③を考えれば、マスク着用時に、オープンスペースでヒトとすれ違っただけでCOVID-19に感染することはまずありません。もっと言えば、人を避けて、誰とも会話せずに、近所を散歩するだけであれば、マスクを外していても問題ありません。
これから暑くなり熱中症にも気を付けなければならないので、COVID-19の感染特性をよく理解して、必要な分だけ対策をとることが肝要かと思います。
次回は重症化リスクについてコメントしようと思います。