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新型コロナウィルス感染症(COVID-19):疫学

2020年11月(予定)に尼崎市東七松町に新しく開院する内科、呼吸器内科クリニック「まつうら内科」院長の松浦 邦臣です。

今回は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の疫学についてコメントしていきたいと思います。

 

 

◆新型コロナウィルス感染症(COVID-19

これまでにもヒトに病原性をもつコロナウィルスは6種類存在していました。もともとヒトヒト間で軽い風邪の原因として流行していたものが4種類。そしてある動物の間で流行していたものが、変異を経てヒトに感染力をもつようになったのが2種類あります。後者がSARS(重症呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)と呼ばれ当時、局地的流行(エピデミック)を引き起こしました。今回の新型コロナウィルス感染症はヒトへの感染力をもつ7番目のコロナウィルスとして報告され、起源はまだはっきりとしませんがコウモリ間で流行していたものが、中国武漢でヒトへの感染力を獲得した可能性が指摘されています。

 

動物からヒトへと感染力を新たに獲得することはインフルエンザウィルスでも起こりえることで、鳥類に流行するウィルスがヒトへの感染力を持った鳥インフルエンザは記憶に新しいかと思います。このときウィルスのもとの宿主に対する毒性の強弱は、かならずしもヒトに対する病原性の強弱に関連しません。たとえば鳥類に低病原性を示す鳥インフルエンザがヒトには高病原性であることもあれば、その逆もまたあります。COVID-19は、感染しても無症状から軽症が80%程度と考えると、病原性は総じて高いとはいえません。しかし、一部のスプレッダーによって感染力が強い部類に入り、しかも感染者の15%程度で重症、5%で危機的となることが、COVID-19の複雑さを深めているといってもいいでしょう。

 

ヒトは免疫記憶のまったくない微生物に対してかくも脆弱です。古くは14世紀のペスト流行で2500万人が、20世紀初頭のスペイン風邪で4000万人以上が亡くなりました。医学が発達した21世紀でも2009年新型インフルエンザウィルスパンデミックによって、米国を中心に1万人以上が亡くなりました。ただ2009年の日本では、ワクチンは無効であったものの、迅速診断キットや治療薬が有効であったことから、死者数は200人に抑えることができました。しかし今回の新型コロナウィルス感染症では、ワクチンなし、検査キットなし(PCRはあるものの精度イマイチで時間もかかる)、治療薬なしのほとんどノーガードの状態で流行してしまったため、今も世界中で多くの方の命が失われています。日本も大きな傷を負いましたが、日本を含む東南アジアは、強烈なロックダウンを強いている欧米と比べ感染者数、死者数ともに低く抑えられている傾向がみてとれます。高温多湿の気候やBCGワクチンの接種率、人種間の多様性、生活様式の違いなどが関係しているのではないかと言われていますが、それは今後の研究であきらかにされていくと期待しています。

 

次回は、感染経路についてコメントしたいと思います。

 

※新型コロナウィルス感染症についてはまだ解明されていない部分も多く、あくまで2020年6月2日時点での私見であることをご了解ください。

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