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新型コロナに第3の治療薬パリシチニブ認可。しかし…

尼崎市東七松町にある「まつうら内科」院長 松浦邦臣です。

さて今回は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)における第3の治療薬についてお話していきましょう。

厚生労働省は(2021年)4/23に、レムデシビル、デキサメタゾンに次ぐ第3の治療薬としてパリシチニブ(オルミエント)を認可しました。パリシチニブはファビピラビル(アビガン)と同じく経口薬であり、これまでの治療戦略(ストラテジー)を大きく変えるのかっ?と期待しましたが、残念ながら今のところ、医療界や世論で大きなインパクトとはなっていないようです。そのあたりの背景を私なりに推測していきたいと思います。

 

【パリシチニブ(オルミエント)の有効性】

パリシチニブは、もともと関節リウマチに使用される経口免疫抑制剤です。以前よりコロナウィルスによって惹起されるサイトカインストーム→肺障害に対して一部の免疫抑制剤が有用ではないかと言われてきていました。すでに認可されたデキサメタゾンを筆頭に、やはり関節リウマチの治療薬であるトシリズマブ(アクテムラ)も期待されてきましたが、トシリズマブよりも先にパリシチニブ(オルミエント)が認可されたということになります。パリシチニブの有効性などを検証した第Ⅲ相試験COV-BARRIERの結果を製造・販売元のイーライリリーが4月8日に以下のように発表しています。

「COVID-19の入院患者を対象にステロイドや抗ウイルス薬レムデシビルなどを含む標準療法にバリシチニブ(4㎎)上乗せ効果(投与期間は最長14日間または退院まで)を検証したところ、主要評価項目である高流量酸素投与または人工呼吸管理への移行、死亡について、プラセボ群との有意差は得られなかった。一方、全死亡率を38%低下させるなど死亡率に影響を及ぼす可能性が示されており、COVID-19に対する免疫抑制効果だけでなくウイルスの増殖抑制効果も期待されている」。

 

【どう評価する?】

うーん、高流量酸素療法(ネーザルハイフロー治療)や人工呼吸器装着に移行するリスクは軽減できなかった(軽減傾向はあったが有意差つかず)ものの、すでにハイフロー治療や人工呼吸器を装着している患者さんの死亡率は38%下げたということですね。ということは現時点でパリシチニブの恩恵を受けるのは、いわゆる重症の患者さんだけとなります。もちろん重症の方の治療は大事なことですが、感染拡大を防ぐ世論の関心が、いかに軽症→中等症、中等症→重症への移行を抑えるかにあると仮定すると、パリシチニブが今の世論に大きなインパクトを与えていない理由が見えてくるようです。

 

【結局はアメリカの後追い?】

バリシチニブは昨年(2020年)11月19日に米国食品医薬品局(FDA)から、酸素吸入、侵襲的人工呼吸管理、またはECMOを必要とするCOVID-19の疑い例、または検査でCOVID-19と確定した入院中の成人患者、および2歳以上の小児患者に対し、レムデシビルとの併用による緊急使用許可を受けています。承認には至っていないものの、これまでに全世界で20万人を超えるCOVID-19患者に対し投与されたようです。レムデシビルのときもそうでしたが、なんだか治療薬の認可が、すべてアメリカの後追いなんですよね。もちろんアメリカの医療水準、罹患者数を考えると、そうならざるを得ないのもわかるのですが、日本の医療機関も頑張って治療薬候補を出しているので、いつかメイドインジャパンの治療法が世界に発表されることを期待して止みません。

 

【期待されるのは、軽症者にも効果がある飲み薬】

今、切望されているのは、無症状または軽症者が使用できる飲み薬であり、ネットなどでは、まだまだファビピラビル(アビガン)への期待が高いように感じます。しかしながら日本感染症学会から何度か発表されている日本における軽症者へのアビガンの治療効果は、いまのところ有効性のあるデータが少なく現時点では認可されることは難しい状況のようです。今後、軽症者にも有効であるという経口治療薬がでれば、それこそ世界中に大きなインパクトを与えるのは間違いないでしょう。ワクチンと治療薬、その両輪がそろってこそ私たちはCOVID-19を完全に克服することができるのです。

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