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尼崎市東七松町にある「まつうら内科」院長 松浦邦臣です。いよいよ日本でもコロナワクチン接種が始まりました。まずはファイザー社製のワクチン(コミナティ筋注用)で、3週間隔の計2回接種で有効率90数%とのことですが、1回目の接種だけでも85%の予防効果があるとの海外の報告もあり期待が高まります。心配される副反応については連日この話題をテレビで報道されていますが、もともとワクチンとは身体に異物情報を入れることで免疫応答を獲得する方法なわけで、100%ゼロリスクをとることは不可能です。自身でリスクよりもベネフィットが上回ると判断されるなら接種するべきで、マスコミの仕事はいたずらに不安を煽ることではなく、リスクとベネフィットを冷静に国民にむけて淡々と報道することではないのかなと思う今日この頃です。
さて、前回特定健診のお話をしましたが、健診といえば尿検査は欠かせませんよね。私は昔から蛋白尿(±)が出たり、出なかったりする体質なので、小学生の頃は「結果陰性だー、よかったー」なんて話をしていた記憶があります。
【尿検査ってどこからが陽性なの?】
健診で行われる尿検査は「定性検査」といって、(-)(±)(1+)(2+)(3+)で判定されます。将来的に腎不全となる予測因子となるのは尿蛋白の場合(1+)以上であるため、これらを「陽性」と判断します。一方(±)は健常人の15.2%で判定されますが、将来的な腎不全のリスクは(-)の「陰性」と差がないため「陰性扱い=偽陽性」となります。血尿の場合も(±)は健常人の18.9%で判定されるため、同じく「陰性扱い=偽陽性」となります。よって尿検査で(-)~(±)をいったりきたりする程度であれば、まず心配はないと思ってよいでしょう。※微量アルブミン尿、ベンス・ジョーンズ蛋白は除きます。
さて、定性検査で尿蛋白陽性と判断されれば、今度はどれくらいの量が出ているのかを調べることになります。これを「定量検査」といって実際に尿中の蛋白量を測定します。これと血液検査のクレアチニン(Cr)値の割り算で推定される尿蛋白量が500㎎/日以上であれば専門科への紹介を検討します。ただ500㎎以上であっても1000㎎以下であれば生理的蛋白尿(後述)の可能性もあるため、必ずしも疾病があると決まるわけではありません。
【500-1000㎎/日であれば生理的蛋白尿の可能性を考える】
一般的に尿に排泄される蛋白は1日あたり40-80㎎程度であるため、150㎎を超えると異常と判断されます。しかし500-1000mg/日であれば、生理的蛋白尿といって、起立性蛋白尿、発熱時の熱性蛋白尿、運動性蛋白尿などの可能性を考えます。起立性蛋白尿の機序は不明ですが10代の蛋白尿の75%、無症候性蛋白尿の90%を占めるため、健診でよく「陽性」となる原因となります。この場合は、早朝尿といって就寝前に排尿→長時間身体を横たえたあと起床してすぐ排尿(起立時間を極力短くした状態で)→尿検査をおこない、これで「陰性」であれば起立性蛋白尿=生理的蛋白尿であるので、心配はないと判断されます。
【尿の泡立ちは蛋白尿?】
むかしから尿が泡立つと腎臓がよくないと言われています。たしかに尿蛋白が多いと表面張力が増して泡立ちやすくなることは事実ですが、尿の泡立ちは濃縮やさきほどの生理的蛋白尿等によって結果的に蛋白濃度が増した状態でも起こりえるため、実際に尿の泡立ちの自覚があっても、200㎎/日以上の蛋白尿がある可能性は22%しかないと言われています。このため感度としてはイマイチだといえますが、受診のきっかけにはなるので、一度しっかりと観察してみるのもよいかもしれませんね。
【最後に】
もうすぐ新年度をむかえ、健康診断を受ける方も多いと思います。もし蛋白尿でひっかかることがあれば上記のことをぜひ思い出してみてください。次はこの流れで尿潜血についてお話ししてみようかと思います。