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チャンス血尿って知っていますか?

尼崎市東七松町にある「まつうら内科」院長 松浦邦臣です。

さて、前回尿蛋白のお話をしたので、今回は健診における血尿とくに尿潜血について書いていきたいと思います。

 

【血尿、尿潜血の定義】

本来血尿とは、スライドガラスに尿1滴を垂らして、顕微鏡の400倍視野(high power field:HPF)で赤血球が5個以上ある状態を指します。しかし実際には目で見てわかる赤~暗赤色の尿を「(肉眼的)血尿」、目で見てもわからないが顕微鏡でみると赤血球が混入している尿を「(顕微鏡的)血尿または尿潜血」と呼んでいます。肉眼的血尿の自覚がある人はまっさきに病院を受診しているでしょうから、健診での血尿の指摘は、ほぼ「尿潜血」のことを指しているといってよいでしょう。

 

 【健診でおこなわれるのは尿試験紙法】

健診で一般的に行われる尿試験紙法は、赤血球の成分であるヘモグロビンが0.06㎎/dl以上になると反応するようになっているため、実際に尿中に赤血球が混入しなくても陽性(1+以上)となることがあります。たとえば尿になる前の血液の状態で赤血球が壊れる(溶血)と、大量のヘモグロビンだけが尿中へ移動することで尿試験紙法では血尿と診断されます。ただし、この尿には実際の赤血球は混入していないため厳密には「血色素尿(着色尿)」と呼ばれるもので、赤血球が混じる血尿と区別して考える必要があります。また筋肉が破壊される横紋筋融解症やクラッシュシンドロームの場合でも、筋肉内に大量の含まれるミオグロビンという成分に尿試験紙法が反応するため陽性と判定されます。

 

【チャンス血尿と言われたら】

チャンス血尿とは、健診などで偶然発見された無症候性顕微鏡的血尿のことです。試験紙法で血尿となった場合、尿路結石や尿路感染、腫瘍、糸球体腎炎に加え上記の病態を考えなければなりませんが、一方で陽性となった尿を顕微鏡でみても赤血球が混じっていないケースが約35%(およそ3人に1人)あり、再検査で陰性に変わるケースも47%(およそ2人に1人)あると言われています。機序は不明ですが運動後のおよそ12%で血尿を生じますし、女性の場合には月経血が混入したりと、試験紙法による「偽陽性=病的意義なし」はしばしば遭遇するのです。

このため尿潜血陽性となった場合、いきなり精密検査をうけるのではなく、再検査のうえ顕微鏡検査(尿沈渣)が推奨されます。再検査で尿潜血陰性+尿沈渣で赤血球が存在しなければまずは心配ないでしょう。一方で持続して血尿を認める場合には、尿蛋白の結果とあわせ糸球体性であれば腎生検、非糸球体性であれば尿細胞診、腹部エコー検査、膀胱鏡などが必要か専門医と相談しましょう。精密検査をうけた持続性無症候性血尿の数%で尿路上皮癌を認めたとの報告もあり、特に40歳以上の男性、喫煙者の方は注意が必要です。

【最後に】

ビタミンCであるアスコルビン酸を多く摂取すると、尿試験紙法で尿潜血のほか、尿糖、尿ビリルビン、亜硝酸塩(=尿路感染の指標)の反応まで消してしまいます。このため検査前日のビタミンCやサプリメントの摂取には十分注意してください。

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