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コロナ第5波収束のファクターかも。ウィルス修復酵素に異変!?

尼崎市役所から北へ車で1分、東七松町にある「まつうら内科」院長 松浦邦臣です。制御不能とさえ思われた第5波がなぜか急速に収束し、本当久しぶりに平穏な日々を過ごすことができるようになりましたね。じつはこの収束、「ウィルスのコピーエラーを修復する酵素に変異がおこったことで、増殖困難となったことが原因ではないか!?」と国立遺伝子研究所と新潟大学のチームが発表しました。今回はこのトピックについてお話をしていきます。

 

【ウィルスにとって、コピーエラーは日常茶飯事】

ウィルスはヒトの細胞内で増殖するときに何百という自分のコピーを作成します。しかし同時にコピーエラーも数多く発生するので、不良品も多く作成されます。これら不良品の中で、ほんのごく一部が偶然あらたな感染能力を獲得して「変異種(アルファ株~デルタ株)」となって世界を席巻しているわけですが、ほとんどの不良品は放っておくとウィルスとして機能できず死滅していきます。そこでデルタ株は、これら多数の不良品を「nsp14」というゲノム修復酵素を使って修復し、良品として大量に復活させることで大変強い感染力を維持していたようです。

 

【nsp14の遺伝子(設計図)が改編された】

デルタ株にとっていわば生命線といえる「nsp14」ですが、どうもヒト体内にある遺伝子改編酵素「APOBEC(アポベック)」によって、設計図となる遺伝子コードが書き換えられてしまったのではないかと推測されています。これによってデルタ株本来の修復能力を失い、コピーエラーによる大量の不良品を復活させられなくなり、デルタ株はこれまでのような感染力を維持できず実行再生産数(感染した人が、他に伝染す人数)が1以下に低下、第5波が感染収束に至ったのではないかと考察されています。

実際、nsp14遺伝子に変異が認められるウィルスでは、未修復のゲノム変異が通常の10-20倍残っており、良品として復活できていないことも示されています。

 

【APOBEC(アポベック)は救世主?】

じつは、APOBEC(アポベック)酵素は、ヒト細胞内における抗ウィルス因子としてすでに同定されている蛋白であり、実際HIVウィルスやB型肝炎ウィルスの複製を阻害することもわかっています。東アジアやオセアニアではこの酵素の活性が高い人が多いことから、上手くデルタ株の「nsp14」にヒットしたのかもしれませんが、果たして本当にAPOBECが第5波の救世主となったのかどうかはもうちょっと検証が必要といえるでしょう。ただこれまでコロナの波が押し寄せては引きを繰り返している理由が、このAPOBECの効果だとしたら…と、ちょっと期待してしまいますね。

ちなみにですがこのAPOBEC、ヒトの遺伝子も改編してしまうことがあるようで、悪性リンパ腫や他の癌の発癌に関わっている可能性が示唆されているようなんです。コロナからたくさんの人を救った酵素かもしれないのに、なんとも皮肉なものです。

 

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