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いよいよワクチンが始まりますね。

尼崎市東七松町にある「まつうら内科」院長 松浦邦臣です。いよいよ5月下旬から65歳以上の高齢者を対象としたコロナワクチンの接種が始まります。コロナ感染拡大防止の切り札とも言われ、これまでの防戦一方の状態から、攻めの感染制御への戦略転換が期待できます。今回は高齢者接種に多く使用されるファイザー社製のワクチン「コミナティ」について取り上げ、効果と接種方法、予測される副反応についてお話していきたいと思います。

 

【メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンとは】

報道にあるように「コミナティ」は人類初のmRNAを利用したワクチンとなります。インフルエンザワクチンが実際のウィルスを鶏卵中で培養し、ここから感染力を失わせた不活化(ふかつか)物質を投与して免疫を獲得するのに対して、コミナティは、ヒトの免疫が攻撃対象として認識できるコロナウィルスのかけらのひな型=「抗原の設計図」(=メッセンジャーRNA)を体内に投与します。投与された設計図を元に、細胞内で製品(抗原となるタンパク)が造られ、さらにこれを免疫が認識することで中和抗体を獲得します。(※製品とは新型コロナウィルス蛋白のかけらのことで、決してウィルスそのものではありません)

なぜ、コミナティでmRNAが採用されたかというと、以前のブログでもご紹介したように、ウィルス培養というのは非常に難しい技術であり、1-2年で培養→不活化までを製品化することが難しいからです。一方でmRNAであれば、ウィルス培養は必要ではなく、たとえ変異種が誕生しても、ヒト免疫が抗原として認識できるウィルス蛋白の設計図さえ把握できれば、短期間でワクチンを作り直すことが可能になります。科学ってスゴイです。

 

【接種方法と効果】

コミナティは3週間間隔で2回接種が原則です。2回接種後約1週間で中和抗体を獲得し、その有効率は95%といわれています。有効とは「感染しない、もしくは感染しても重症化しにくい」ことで、「絶対にウィルスにかからない」ことではありません。ちなみに1回接種だけで80%(イギリス型で50%、インド型で30%)の有効率がみとめられるという報告もあり、「じゃあ、1回接種にして、早く広く国民に接種すればいいじゃないか」と思いがちですが、このデータはあくまで後ろ向き研究(retrospective study)の結果であり、いわば後出しじゃんけんと同じです。本当に1回接種で良いかどうかは、前向き研究(prospective study)といって、何千何万人単位の大規模な治験とデータ収集から科学的根拠を導き出さなければいけません。残念ながら、今世界にもういちど治験を繰り返す余裕はなく、2回接種で推進していくしかないのです。

ただ今後、接種が進み感染制御に余裕が生まれれば、製品や接種方法も変わるでしょうし、mRNAという技術も変わっていくかもしれません。

 

【副反応について】

コミナティを接種した後、接種部位に副反応おこる場合(局所反応)と、全身に副反応がおこる場合(全身反応)の1つ、もしくはその両方が予測されます。

※以下のデータは、年齢層の高いデータを抽出して掲載しています。

①局所反応(※海外:56歳以上のデータ)

1回目 2回目
疼痛 71% 66%
発赤 5% 7%
腫脹 7% 7%

※全年齢でのデータになりますが、日常生活に支障がでるほどの疼痛は、1回目接種の約30%、2回目接種の約15%で報告されていますが、概ね3日で改善します。

 

②全身反応(海外:56歳以上のデータ。ただしアナフィラキシーのみ全年齢におけるデータを掲載)

1回目 2回目
38度以上の発熱 1% 11%
倦怠感 34% 51%
頭痛 25% 39%
寒気 6% 23%
嘔気、嘔吐 0% 1%
筋肉痛 14% 29%
関節痛 9% 19%
アナフィラキシー※2 0.001% 0.00025%

※1 全身反応は2回目の接種後で頻度が高い傾向にありますが、獲得した免疫が働いた結果ともいえます。

※2 アナフィラキシーは接種後15~30分以内に起こることがほとんどで、1回目で27-60歳の接種者、2回目で31-63歳の接種者で認められました。海外の治験では65歳以上のアナフィラキシーは起こりにくいようです。

 

【副反応の傾向と対応】

先日、当院の看護師さんと医療従事者の集団接種に出務してきました。1回目は接種班、2回目は救護班としてです。幸いアナフィラキシーに遭遇することはなく、何名かに発疹や紅斑がみとめられた程度でした。当該集団接種場での医療記録によると接種で起きた副反応の多くが、女性の気分不良や皮膚症状で、経過観察または抗アレルギー剤の投与で帰宅されていました。女性に多い原因の推測として、化粧品などに多く含まれるポリエチレングリコール(PEG)という成分が、本ワクチンにも含有されているからではないかと言われています。すでに化粧品PEGをアレルゲンとして認識されていて肌に触れる程度では問題はない方が、接種でPEGを体内に取り込むとアレルギー反応を起こすのかもしれません。

またもし1回目接種で皮膚症状を含む全身反応を起こされた方が、2回目接種をどうするかは個人の考え方にもよりますが、コミナティの添付文書上は重度のアレルギー反応(アナフィラキシー等)でなければ、投与間隔をあけるか(最大6週)、接種後の経過観察時間を延長(最大30分)にするなど、より注意をしながら接種を検討してよいことになっています。国内の事例をみてもアナフィラキシーを起こされる方は、もともと重度のアレルギー疾患を有している方が多いと報告されています。たとえアレルギー疾患でも、アレルギー性鼻炎や安定喘息程度であれば、必ずしも強い全身反応とはならないようです。ちなみに私もアレルギー性鼻炎と喘息をもっていますが、2回の接種ともに局所反応(疼痛)だけで痛み止めを飲むほどでもなく、全身反応はまったくありませんでした。これはこれでなんだか…私の免疫はちゃんと働いているのか??…複雑な気分です。

 

なにはともあれ、これら今までの知見と、集団接種での経験を、自院でも生かしていきたいと思います。

 

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